1.研究題目  ECRプラズマおよびイオン衝撃を用いた超硬質窒化炭素結晶膜の合成

2.研究機関名  長岡技術科学大学
3.研究種目名  学長が推進する研究プロジェクト
4.研究代表者  斎藤秀俊  長岡技術科学大学 工学部 助教授
5.研究分担者  伊藤治彦  長岡技術科学大学 工学部 助教授
        八井 浄  長岡技術科学大学 工学部 教授
6.プロジェクト(事業)の概要

本プロジェクトでは、窒化炭素膜の硬質化を行う。

 結晶性窒化炭素はダイヤモンドに匹敵するほどの弾性率を有すると預言された仮想材料である。C-N単結合はC-C単結合に比較して結合エネルギーが大きく、C-N結合を3次元構造中で適正配置すれば、同様な3次元構造を有するダイヤモンドより堆積弾性率が大きく(硬く)なるはずである。

 本プロジェクトの基礎となるこれまでの研究結果では、非晶質窒化炭素膜が得られている。得られている非晶質窒化炭素膜は最大窒素組成が50at%で十分な窒素を含有しているものの、非晶質のために明確な3次元構造をとってない。そのため十分な硬さにはならない。構造解析の結果より、非晶質窒化炭素膜は1nm程度の三次元クラスターと二次元クラスターの混在からなることがわかっている。さらにこのクラスターがそれぞれ数少ない結合でつながっている。硬質化あるいは結晶化のためには、@三次元クラスターの存在数を増やす、Aクラスター間の結合密度を増やすことが有効と考えた。

 そこで本プロジェクトでは、@電子サイクロトロン共鳴プラズマとプラズマからのイオン衝撃を窒化炭素膜形成過程に導入し、イオン衝撃によって三次元クラスターを積極的に生成する、A静電加速器を利用してHe+イオンを高速加速し、それを窒化炭素膜に打ちこむ。高速He+衝撃によりクラスター間の結合を阻害する膜中の水素を弾性衝突によりはじき出す。以上のプロセスにより膜の窒化炭素膜の結晶化と硬質化を目指す。

 

7.研究実績の概要

  1. 電子サイクロトロン共鳴プラズマとプラズマからのイオン衝撃を窒化炭素膜形成過程に導入し、イオン衝撃によって三次元クラスターを積極的に生成する。
  2.  電子サイクロトロン共鳴プラズマ発生装置一式を購入し、窒化炭素膜の作製を開始した。現時点ではサイクロトロン共鳴条件を実現していないため、十分なイオン衝撃を膜形成過程に導入することはできていない。しかしながら、イオン加速電圧を0〜-50 Vの範囲で増加した(イオン衝撃を強くした)結果、0 Vで3 GPaの硬さが-50 Vで21.6 GPaまで硬くなった。この硬さはアモルファス炭素系膜の最高値26 GPaに近く、電子サイクロトロン共鳴条件が整ったあとの膜の作製実験に大きな期待がもてる。

  3. 静電加速器を利用してHe+イオンを高速加速し、それを窒化炭素膜に打ちこむ。

 本学極限エネルギー施設に設置している静電加速器を利用してHe+イオンを窒化炭素膜に照射し、高速He+衝撃によりクラスター間の結合を阻害する膜中の水素を弾性衝突によりはじき出した。クラスター間の結合を阻害する水素はC-Hと N-Hのいずれかがあるが、現時点までC-HのHのはじき出しに成功した。He+照射前は1.6 GPaの窒化炭素膜の硬さが60分照射後は6 GPaにまで増大し、さらに水素が脱離しクラスター間の結合が形成され、結晶化の方向へ向かっていることが分光学データより証明された。

 今後@、Aを組み合わせ、窒化炭素クラスター内部と外部の結合を強固にし、ダイヤモンドの体積弾性率を凌ぐ新材料窒化炭素の創製を目指す。

 

7.結果の公表

 

c齋藤秀俊